■ 別府の家
敷地は別府市中心部、西側は新設された大通りに面し、周辺は新旧の建物が混在するもののかつての面影も残す環境である。クライアントは、リモートでの仕事が可能なこともあり、温泉と海と山の自然に恵まれた別府での暮らしを選択してのUターンであった。
昭和初期に建てられ、増改築を重ねた母屋のうち、座敷二間及びその前の庭木を撤去しての計画である。
交通量の多い道路からの騒音とプライバシーを守りつつ、既存母屋と適度に向き合うよう、仕事部屋と住宅棟をL型に配した。広いデッキにはパーゴラを設け、それらを囲むようにふんだんに植栽を施し、敷地内にさらに新たなコートハウス的な構成となるよう図った。住宅棟、仕事部屋、パーゴラが、適度な間合いと密度を保つことによって、様々に移りゆく自然を感じる心地良い暮らしの場をイメージした。
また両親の住む母屋との関係を考慮しつつ、可能な限り建築前の趣を残すよう配慮し、新しくも懐かしい空間を保っている。
住宅棟は、仕事部屋の片流れの屋根と一続きとし、南庭側を1.5階分の天井高さのLDK、北側を水回り、階段、個室とした。各空間は庭との繋がりを活かしつつ、吹抜・格子・トップライトの光を介して親密で柔らかな関係となるよう意図した。
仕事部屋、住宅棟とも、内部は漆喰と木質、外部はシラス壁仕上げとし、その場に応じたナチュラルで優しい空間となっている。
PHOTO: Blitz studio