森吉直剛アトリエ
住所: 東京都中央区銀座1-3-3東亜ビル6階A
TEL : 03-3567-6511
E-mail
:info@moriyoshi-a.com
URL : https://www.moriyoshi-a.com/
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■ Y邸リノベーション / House Y Renovation
タワーマンション最上階リノベーション
通常のマンションリノベーションの場合、既存の問題点が多く見付かり、壁を抜いたり天井を上げたりなど建築的な改修をして空間性と機能性を改善する事が必要ですが、今回は既存の問題点がほとんどなく、ほぼクライアントの求める機能を満たしたプランで、開放的で風通しも確保された空間でした。
唯一のハードの改善として、キッチンとダイニングの間の壁を撤去して、開放的な空間に相応しいオープンキッチンが出来るようにしました。その他は家具と表層の内装工事で、設計及び見積期間2ヶ月、工事期間2.5ヶ月のスピードプロジェクトでした。
クライアントの要望は、内装を好みの色合いと素材にすること、オープンキッチンにすること、書斎やクローゼットに造作家具を設置すること、そして、ソファ、ダイニングセットなどの家具は好みのものを選定して空間に合わせて入れる事でした。限られた予算の中で、キッチンと家具はこだわりたいということで、内装はできるだけコストを抑えることが命題となりました。
リノベーションでコストを下げる手法として、解体を減らして職人の手間を少なくすることの効果が大きいです。従って今回は、解体撤去を殆どせず、基本的に既存の上に増し貼りをして全ての仕上げを変えることにしました。壁と天井はプラスターボードの9.5mmを増し貼りし、一部を除きビニルクロスではなく塗装仕上げに変えています。窓を通して入る自然光の移り変わりが綺麗な空間だったので、塗装の壁が陰影をより美しくすると考えました。床は既存フローリングの上に、さらに挽板フローリングやカーペット等を増し貼りしています。天井が9.5mm低くなり、床が12mm程上がりますが、最上階のマンションは天井高が高く、既存で2.8Mあったことから、天井高さの体感としては殆ど変わらないだろうと判断しました。また荷重も若干上がりますが、既存図面が施工図も含めて残っていたこともあり、下地や躯体の状況を検証し、問題ないことを確認した上でこの手法を選定しました。既存の収納は、そのままの形状で生かし、仕上げをオレフィンシートで覆い直し色と質感を変えています。これらの手法は、それぞれの端部の処理や既存設備との取り合いに破綻を起こさないことが前提となります。掃き出し窓の段差や、壁際の窓の処理、そして設備機器の取り合いなどが課題でしたが、既存の内覧時に、この視点で端部や取り合いを注意深く調査して、実現可能な事を確認した上で提案しました。その効果から、他社提案より大きく減額が実現できたようです。
仕上げ材と家具選定は、クライアントと共に多くのショールームを廻り、サンプルを受理して部位別でアンバランスにならないように確認しながら選定していきました。この課程は、クライアントと建築家の感性を頼りに進める作業ですが、全体の出来上がり空間を想像しながら、個別でなく総合的に判断していくことが重要です。今回個々の選定をクライアントが、全体のコーディネートと調整を当方が行い、全体の色合いや質感に統一感がとれたと思います。
今回は、クライアントが建築家、メーカー、そして施工会社に対して専門家として信頼していることをプロジェクトの期間通して感じました。その有り難い思いをクライアントに還元することは、プロジェクト関係者全員の自然な流れとなっていました。仕様選定に真摯に対応してくれた製作キッチンメーカーの方、全体を考えながら家具の提案をしてくれた家具メーカーの方、そして難しい工事をハイスピードで精度良く達成してくれた施工会社の方、全てがクライアントの誠意からつくりだされたと感じられたプロジェクトでした。
photo by Satoshi Shigeta
■ 窓が切り取る四季の雄大な自然──愛犬とのびやかに過ごす宮津の平屋住宅
京都府宮津市、日本海に面した雄大な自然を背景に建つ週末住宅。
過去の作品で手掛けた「八ヶ岳の別荘」を訪れて感銘を受けた施主夫妻が、自宅ではなく別荘だからこそ時間をかけ、将来的な移住も見据えて依頼した計画です。
ご要望はご夫婦と愛犬がのびやかに過ごせる庭としてドッグランを中心に、薪ストーブのある暮らしを叶える平屋でした。
構成の核は南の山に向かって開かれたLDK。深い軒を備えた大屋根は、構造を工夫することで材寸を抑え、水平ラインを軽やかに整えています。雪を意識した勾配の操作も、デザインの一部として自然に馴染ませています。
外壁は杉板、構造材には京都府産ヒノキを採用。地域性と素材感を重視し、時間と共に変化する山の色合いと呼応して暮らしに奥行きを与えます。
窓の稜線をフレームとして外の景色を切り取り、内部を介して四季の風景を眺める体験はこの住まいならでは。浴室も山に面しているため目隠しを設けず大きな窓を開放でき、湯に浸かりながら自然と向き合える贅沢さを実現しました。
リビング中央にはお施主さんが自ら選んだ薪ストーブを配置。高天井と組み合わせることで輻射熱が心地よく行き渡り、炎のゆらめきが視覚的な豊かさをもたらします。さらに木製製作建具の大開口は全て引き込み可能で、庭やデッキと連続する大らかな空間を実現。
広い庭は愛犬のドッグランとして計画され、室内には専用のペットドアを造作と組み合わせて設けられました。これにより安全性と意匠を損なうことなく犬が自由に内外を行き来でき、家族と同じように自然と繋がる暮らしの動線が整えられています。
単調になりがちな平屋に、窓の向きや背景を変える工夫を凝らすことで、多彩な景色と出会える空間に。自然を暮らしに取り込みながら、家族と愛犬がのびのびと過ごす週末住宅は、移ろい続ける環境と共に豊かさを育んでいきます。
photo:繁田諭