プロの住宅レシピ 変形地と積雪地の環境を活かした、五角形の小さな住まい
ご両親の暮らす母屋の庭の一角に、離れとして増築した小さな住まい。
敷地はやや変形した形状で、建物の平面も敷地の形に合わせて五角形のようなプランとしました。
特徴的な形状の屋根は、積雪地域であることから、雪の荷重を分散させるための構造計算をもとに、多面体のような勾配屋根が生まれました。これにより、積雪をうまく逃がしながら、構造的にも安定させる機能性とデザイン性を兼ね備えた形です。
隣家との距離が近いため、お隣の建物の図面も確認し、視線が重ならないよう、一階を寝室、二階をLDKの構成としました。二階は屋根の勾配を活かしたワンルーム空間とし、できる限り広く、おおらかに感じられるようデザイン。
勾配屋根からできる高低差を活かし、 家族が集まるダイニングやリビングは天井を高く、開放的に。一方、畳スペースや家事スペースは天井をぐっと低く抑え、落ち着いた居心地を生み出しています。ワンルームでありながら、天井の高低差や壁の凹凸によって、さまざまな居場所がゆるやかに共存します。
こうした構造に加え、冬の寒さが厳しい反面、夏は風がよく抜けるという土地の特徴から、南側には日差しをたっぷり取り込む大きな開口を。北側には人の目線の高さまで壁を設けて、断熱性を確保。さらにハイサイドライトを設けることで、南から北へ風が抜ける通風経路が生まれ、夏場はエアコンがなくても快適に過ごせます。
また、共働きのご夫妻にとって、家事動線も重要です。
そこで北側に水まわりを集約し、キッチンを中心に左右にランドリースペースとパントリーを配置。横動線でつながることで、家事の流れがスムーズに。キッチンは対面式にすることで広々と使えます。
五角形の平面や多面体の屋根など、敷地形状や環境と丁寧に向き合い、ご夫婦の心地よい暮らし方を追求したこの住まい。敷地の個性や条件を住まいの魅力へと変えた住まいとなりました。
Photo : 淺川敏