プロの住宅レシピ 多角形な空間が生み出す、多様な光が彩る暮らし
高山 佳久
「南側からの光を取り入れたい」という強いご希望からスタートした住まいづくり。東側には道路が走り、南側はいずれ大きな建物が建つ可能性がある細長い敷地条件の中で、リビングに南からの光をどう確保するかが課題でした。
そこで、外壁を南西方向に45度カットするデザインで、南に向けられる面積を増やし、南側から入る光を確保。こうして生まれた外観の形状は、室内にもそのまま引き継いでいます。
斜めにカットした外観と屋根形状が、室内では複雑な多角形の天井として現れ、光を多方向から反射させます。東からの朝日や南からの柔らかな光が西へと流れていくにつれ、さまざまな質の光が室内に届きます。光は多層的に広がり、どこから射しているのか一瞬迷うほど。
光そのものを際立たせるため、室内は極力白に統一。素材を絞ることで、複雑な天井形状によって生まれる影や反射を損なわず、光の質感が純粋に感じられるよう設計しています。
庭に敷いた芝の緑は、白い室内と鮮やかな対比をつくり、美しいコントラストを生み出します。二階の個室からも芝が望めるように急遽追加した窓は、この住まいの特等席となりました。
テレビ台や壁面収納では、一直線ではなく室内の配置に合わせて少しクランクさせています。わずかな奥行きの変化がサイズの異なる収納を生み出し、多様な物を受け止める収納力につながっています。
天井においても単に高低差をつけるのではなく、低い部分と抜けのある高い部分を組み合わせることで、包まれる感覚と開放感の対比が生まれ、暮らしの中にリズムが生まれます。
南側のを取り入れるのが難しい敷地条件のなか、お施主様の強い希望をかなえるために生まれた形状が、結果的に空間の豊かさへとつながりました。
Photo:笹倉洋平