プロの住宅レシピ スペイン広場のような階段でつながる、スキップフロアの住まい
高山 佳久
南側に前面道路、北側斜線の規制がかかる狭小地に建つスキップフロアの住まいです。
建築可能なボリュームが大幅に制限される中、ワンルームでつながるスキップフロアを採用し、狭さを感じさせない工夫を施しています。
スキップフロアとして床に段差をつくることで、エリアが完全に切れないよう緩やかに繋ぎ、連続性を持たせました。大きな階段はひとつながりを意識しつつ、段差が空間を程よく分断し、仕切り壁のような役割を果たしてくれるので、家族はそれぞれ好きな場所で居場所を作ることができます。
木製の階段はスペイン広場の大きな階段をイメージし、幅広い設計にすることで、腰掛けたり、ちょっとした居場所となったり、行動を促す場となることを意識しています。
それとは対照的に、コンクリートの階段では重さが出ないよう、抜け感のあるデザインに仕上げました。段板だけを壁から突き出させて、透け感を持たせることで、軽やかな印象となります。1階から連続して続くシームレスな階段手すりの繊細なラインが、さらに軽やかな雰囲気を引き立てます。階段が1段ずつ抜けていることで、上からの光が段の隙間から漏れ出し、柔らかい空間を作り出しています。
その他にも、北側斜線により面積が狭くなる分、半地下を作り住スペースを確保するなど、狭小地における制約を乗り越え、広がりと居心地の良さを追求した住まいとなりました。
Photo : 笹倉洋平