プロの住宅レシピ 土間から海へ、日常が続く──岩井のビーチハウス

多田設計事務所
多田 博

海側とは対照的に道路側は開口を抑えた静かな表情。水平ラインを強調した外観に屋根上のハイサイドライトだけが控えめに現れ、内部へと光を導く構成が読み取れる。

白い外壁に包まれた玄関まわりは外部から内部への切り替えを意識した落ち着いた佇まい。庇の下に生まれる陰影が、海辺の強い光をやわらかく受け止めている。

玄関から連続する土間空間とキッチンへと導くアーチ状の開口を設けた構成。素材と床レベルを切り替えながら、用途の異なる空間をやわらかくつなぎ視線と動線に奥行きを与えている。

限られた空間を有効に使うため上下に展開した造作ベッドを設けたゲストルーム。宿泊に訪れた家族のお子さんたちが喜ぶ秘密的な空間。

天井に現しとした架構が、室内の奥行きと方向性を明確に示す。大開口からの眺めを受け止めながら、構造そのものが空間の骨格として意匠化されている。

千葉県南房総市・岩井海岸に建つこのビーチハウスは、家族や仲間が集い、自然とともに過ごす時間を受け止めるための住まいとして計画されました。

目の前には漁港と穏やかな海が広がり、夏には臨海学校の声が遠くに聞こえる。ここでは日常と非日常の境界が、意識せずともゆるやかに溶け合っています。

玄関を入ると、床仕上げを切り替えた土間空間が現れ、そのまま建物の奥へと視線が抜けていきます。外から持ち帰った砂や濡れた道具を気にせず置けるこの場所は、海辺の暮らしを前提にした住まいならではの余白です。

リビングにはアーチ状の開口が設けられダイニングキッチンへと柔らかく繋がっています。用途の異なる空間を明確に分けるのではなく、素材と形で緩やかに切り替えることで、動線そのものが心地よい体験となっています。

テラスに面して設けられた屋外のシャワーや手洗い場も、この住まいを象徴する要素のひとつ。海から戻ったあとに砂を落としそのまま外で身体を流す。仲間とバーベキューを楽しんだ後には、食器を洗い水を補給する。──これらの動作を外部で完結させることで、暮らしのリズムが自然と整えられています。

内部に目を向けると、ゲストルームには上下に展開した造作ベッドが設けられ、限られた空間を存分に使っています。友人家族が泊まりに来た際には、子どもたちが上下段を選びながら楽しむ姿が広がるそう。天井には架構をそのまま表し、コンパクトな部屋に過度な閉塞感を与えない工夫も施されています。

外観は白を基調としたシンプルな構えとし、周囲の景観に静かに馴染ませています。開口を抑えた道路側と海へ向けて開かれたリビング。その対比がこの家で過ごす時間の質をより際立たせています。

自然と人、内と外を行き来しながら、思い思いの時間が積み重なっていく──このビーチハウスは、そんな暮らしの風景を丁寧に受け止める器となっているのです。

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