プロの住宅レシピ 引き継がれた時間が息づく──和の心が紡ぐ住まい

多田建築設計事務所
多田 博

リビングに設けられた障子は一般的な障子よりも透け感が高く、光や外の気配をやわらかく室内へ取り込みながら和の雰囲気を静かに漂わせている。

生活の中心となるキッチンとダイニングには調理や食事、会話が自然に繋がり、日々の営みが穏やかに重なっていく構成になっている。

階段脇に設けられた奥様の書斎コーナー。大きさは最小限に抑えつつ、窓からの光が手元をやさしく照らす設え。読書や書きものに向き合うための私的な居場所が、暮らしのリズムに静かな奥行きを与えている。

玄関まわりには古材店でお施主さん自らが選んだ材や、北鎌倉の鍛冶屋による兎を模した表札を採用。ドアホンを兼ねたこの表札は訪れる人をさりげなく迎える存在。

外壁には自然素材の左官材を用い、鎌倉山の緑と呼応する穏やかな表情に仕上げている。時間の経過とともに土地に馴染んでいく構えとすることで、この住まいは周囲の環境に静かに溶け込んでいる。

鎌倉山の緑に包まれるように建つこの住まいはご夫婦2人のための住宅。
和の趣を好み、お茶の稽古に親しむ暮らしを背景に時間をかけて愛着を育てていく住まいとして計画が進められました。

ご主人は名古屋の古い民家で育ち、そのご実家より受け継いだ建具や記憶が家づくりの随所に影を落としています。単に古いものを再利用するのではなく、過去から引き継がれた時間や感覚を現在の暮らしの中にどう織り込むか。その問いがこの住まいの根底にあります。

窓や障子の木製建具、枠などの造作、天井の仕上げは木で揃えられています。素材の質感が連続することで、住まいに落ち着いたリズムが生まれています。

近年の省エネ基準改正により、外部に面する木製建具は今後採用が難しくなる可能性もあり、こうした構成は時代の節目を映す選択でもあります。

階段脇には奥様のための書斎コーナーを設計。大きさは最小限に抑えつつ、窓からの光が手元を照らす設えとし、読書や書きものに静かに向き合える居場所としています。家の中に埋め込まれたこの小さな空間が暮らし全体に奥行きを与えています。

玄関まわりには、お施主さん自身が古材店で探し求めた材を用い、空間の一部として取り込んでいます。また、北鎌倉で明治・大正期から続く鍛冶屋による兎を模した表札を採用。

ドアホンを兼ねたこの表札は、機能と遊び心を併せ持ち、訪れる人をさりげなく迎え入れます。住まいの入口に、住まい手の記憶や縁が丁寧に刻まれています。

自然素材の外壁と抑制された外観は、鎌倉山の環境に静かに馴染み、主張することなくそこに在る。これからの時間とともに育っていく住まいとして、この家は今日も穏やかに呼吸しています。

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