プロの住宅レシピ 家族の思い出も詰まった色で繋がる家
真泉洋介
『葉山の住宅』では室内に様々な色を使いました。
この建物は南側はとても開放的で明るいのですが、北側には擁壁があり、暗くなりがちな立地条件でした。そこで家の奥側である北側を明るく楽しい空間にするため、家の奥に行くほど強く個性的な色を採用しました。光が射すと手前の空間と奥の空間の色が影響しあい混ざって、色が先行して変化して次の部屋と繋がっていくように作っています。トイレや浴室も断絶せず、この家の楽しい色の空間として溶け込んでいます。
加えて、家族の色の思い出も家に盛りこみました。床に紫色のリノリウムを採用しているのですが、この色には子供との思い出があります。この家に暮らす前、都内の井の頭線沿線に住んでいました。電車が大好きだったまだ小さい息子は井の頭線に夢中で、最初に発した言葉が、なんと車両カラーの「バイオレット」でした。それ以来私たち家族は紫色が思い入れのある色となり、『葉山の住宅』を作る際にも家に紫色を使用することにしました。
これは私たち家族の例ですが、それぞれの家族の思い出が詰まった空間をつくることができるのも家づくりの楽しみかと思います。