プロの住宅レシピ 車いすでも、一人で入れるお風呂
納谷 学
車いすのオーナーの方から、「一人でも生活が出来るようにしたい。」というリクエストから、車いすの方が安心して入浴できる浴室をと考 えました。
車いすの方の住宅を設計するのは初めてでしたが、オーナーの方の、「一人でも出来る」という強さに感銘を受け、 「まずは、車いすだと何に気をつけるべきか」が設計の出発点に。入浴時の注意点としては、下半身の感覚がないことから、「足をぶつけて怪我をしても自分で気づきにくい」 「タイルの目地でもケガをする」など多くの困りごとを教えて貰い、できるだけ凹凸の無いフラットな一体成型の浴室の提案に至りまし た。
このバスルームを機能・景観・コスパの全ての面で格上げしてくれるのがFRP。FRP(繊維強化プラスチック)は樹脂を繊維で強化した複合材です。バスルームには防水の下地が必須です。このFRPは仕上げも美しいので、防水下地としつつも表面仕上げの役割も兼ねられます。 加えて、余計な表面仕上げが不要=その分のコストが抑えられるという、相乗効果も。 また、その適度なざらざらとした質感で、体を傷つけることなく滑り止めとなり、転ばないようにもなっており、1つのFRPで「下地・仕上げ・コスパ・滑り止め」と今回の事例では一石二鳥ならぬ、まさに一石四鳥。 できるだけ1つの製品の特性を、何倍にも活かす設計というものを心がけています。
浴槽はフチを厚めにすることで、車いすから、浴槽の縁に腰をかけて、ゆっくりと体をずらしながら入浴することが可能に。 また、FPRを浴室全体にコーティングすることで、デザイン性もあり、モダンで、でも温かみのある空間となっています。