プロの住宅レシピ 大開口が切り取る自然景色──挑戦を暮らしに重ねる飯能の家

片山正樹建築計画事務所
片山正樹

幅2.9m×奥行き1.3mの特注アイランドキッチンが特徴的なリビングダイニング。大きな天板はデクトン一枚仕上げで、自然と調和する空間のアクセントとなる。

床材

天井まで届く窓から自然光が降り注ぎ庭と一体に。西日の影響を受けにくい敷地条件を生かし、カーテンを要さない透明感ある空間が広がる。

風や光を遮らないスリット状の階段手すり。シンプルで軽やかな構成が、2階玄関からリビングへと続く動線をのびやかに演出する。

外観や内部にはできる限り自然素材を用い、1階の軒板にも木材を採用。構造や仕上げの一体感を重視しながら、地域の環境に馴染む表情をつくり出している。

壁と天井の境に仕込んだ照明が白い天井をやわらかく浮かび上がらせ、建物の輪郭と時間の移ろいを美しく描き出す。

埼玉県飯能市の自然に囲まれた土地にご夫婦と愛犬が暮らす住まい。
都内から移住してきたお施主さんが「便利さよりも自然に挑戦できる環境」を求めて選んだ場所です。

ご主人はアイアンマンやマラソンなど耐久レースに挑む方で、川で泳ぎ、山を走る日常そのものがトレーニングに繋がる暮らしを描いています。

設計の出発点は、この土地の周辺環境にふさわしい建築をつくること。景観や植栽、地形、自然光を丁寧に読み解き、地形に沿った自然な配置が計画されました。樹木を残しながら谷の景色を切り取り、周囲の自然と人とのバランスを整えているのです。

内部は「光をとにかく取り込みたい」というご希望に応え、天井まで届く大開口を設計。
西日の影響を受けにくい敷地条件を生かし、カーテンを設けず透明感のある空間を実現しています。
天井高3mの伸びやかな室内は、外にいるかのような開放感を生み出しています。

室内は壁と天井は白の塗装、床材には愛犬への考慮でベージュのリノリウムを使用。 天然素材ならではの温かみと経年変化を楽しめる仕上がりで、壁と天井の白い塗装が光をやわらかく反射します。

リビングの薪ストーブはお施主さんの希望で導入され、計画を進めるうちに別荘のようにくつろげる雰囲気に仕上がりました。

階段の丸パイプ手すりや天井を照らす間接照明など、細部には光や風を通す工夫が施されています。 住まいの随所にはお施主さんの趣味を活かせるように、DIYで手を加える余白も残されています。

外壁の塗装には、雨や日射の影響で表面が部分的に不均一に変化することを避けるため、あらかじめグレー味を帯びた色を使用。

時間とともに銀化する自然な変化を想定しつつ、初期段階から統一感を保つ工夫がなされています。周辺の樹々や冬景色にも馴染む落ち着いた色合いが特徴です。

川のせせらぎや森の四季を眺めながら光と風を全身で感じる生活。時の移ろいとともに表情を変えるこの住まいは、自然とともに呼吸するような健やかな暮らしの拠点となっています。

Photo:西川公朗

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採用されている製品

床材|マーモリウム
田島ルーフィング株式会社
片山正樹建築計画事務所
片山正樹
ここが私の評価ポイント!
床材には田島ルーフィングのマーモリウム ココア ML-3584を採用。
亜麻仁油を主成分とした100%自然素材で構成された床材で、他にはほとんど類を見ない特徴を持っています。天然素材ながら性能が高く、公共施設や土足空間にも使われるほどの耐久性とメンテナンス性を備えています。
汚れやキズも経年変化として受け入れやすく、自然素材ならではの風合いが時間とともに深まります。
歴史ある素材としても知られ、近年は自然素材の価値が見直される中、こうした経年変化も評価対象として取り入れやすくなったという点も大きいです。
紫外線の影響で色の変化が生じますが、それも魅力の一つとして楽しめる方にはお勧めです。
表面のコーティング技術も進化し、従来より扱いやすさが増しています。ビニールシートのようなテカりはなく、マットで落ち着いた仕上がりが空間を品良く演出できます。豊富なカラーバリエーションは中間トーンが多く揃い、選択肢としてのセンスも高いです。
コスト面でもフローリングに比べて抑えやすく、自然素材を取り入れたい方におすすめできる素材です。
採用製品
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