プロの住宅レシピ 伏見の景観に寄り添う──焼杉が包む素の住まい

木村哲矢建築計画事務所
木村 哲矢

勾配天井の梁が連続する2階の居住空間。足元を浮かせたステンレスキッチンとベニヤの造作棚が空間に素材の対比を生む。構造の束柱や梁のラインが屋根形状をそのまま表している。

川側の大きな窓は出窓のように腰掛けられる設計。上部の高窓は紐で開閉でき採光と通風を両立。日中は照明をつけずとも自然光が室内を満たす。

仕上げを省いたラワンベニヤの壁と黒いPタイルの床。白壁はネットショップ撮影用の背景に、奥の土間は将来の店舗スペースとして計画されている。

黒の焼杉と小波鉄板を組み合わせた外壁。伏見の酒蔵建築に倣い地域の風景に静かに馴染む。二段屋根が隣地への配慮と内部空間の豊かさを両立している。

夜の光に浮かぶ黒い外観。軒下に植えられた一本の樹木が温かみを添え、素材の陰影が際立つ。人を迎え入れる家の姿が街並みにやわらかく灯る。

京都・伏見の川沿いに建つ、一人暮らしの男性のための住まい。
1階をネットショップ運営のためのワークスペース、2階を居住空間とした木造2階建て。

将来的にはショップやレンタルスペースとしても活用できるよう、玄関を3つ設け、用途に応じた柔軟な動線を計画しています。中央が住居へのメイン動線、左は土間の店舗空間へ、右は防音仕様のレンタルルームに繋がる構成です。

立地する伏見は美観地区に指定され、屋根勾配や軒の出などにも厳しい制約があります。歴史ある酒蔵が並ぶ街並みに呼応し、外壁には黒の焼杉を採用。

雨に晒されやすい1階部分には鉄板を張り、古い町家が鉄板で外壁を補修してきた伝統的手法を受け継いでいます。 二段構成の屋根は隣地に配慮しながら自然に導かれた形で、内部ではその構造が梁や束として現れています。

露出した構造体の間には短い束柱を挟み込み照明を組み込むなど、構造と設備を一体的にデザインしています。 1階はラワンベニヤの壁と黒いPタイルの床、奥の土間はコンクリート基礎をそのまま仕上げとし、内部は仕上げを極力省き素材の素顔をそのまま見せています。

白く塗装された壁面はネットショップの商品撮影用の背景として活用できます。
天井も張らず、2階の床裏や梁があらわされ空間に力強いリズムを与えています。

2階は床にはウォールナットのフローリング、壁天井のラワンべニアにはオイルを塗布し、しっとりとした質感に。
川に面した窓は腰掛けられる出窓形式で穏やかな水辺の風景を室内へと取り込んでいます。

人工的な仕上げを避け、素材と構造そのものを空間の表情としたこの住まいは、職人の精度と手仕事がそのまま仕上げとなる家。誤魔化しのきかない素直な設計が地域と時間に静かに呼応しています。

Photo:中村写真工房 中村大輔

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