プロの住宅レシピ 光と天井の調律──家族の時間を包む二世帯の住まい
木村 哲矢
京都府に建つ木造2階建ての二世帯住宅。
60〜70代の親世帯夫婦と、子世帯夫婦・子ども2人が共に暮らす住まいです。
1階は共有スペースと親世帯の寝室、2階は子世帯のプライベート空間として構成。リビングダイニングや風呂、玄関は共用とし、世代が自然に行き交う距離感を意識しました。
お施主さんが以前の作品「山陰の住宅」を気に入られ、鳥取の現地まで足を運んで内外をご覧になり依頼に至ったという経緯から外壁には同じタイルを採用。
敷地の奥行を活かして車庫と正面玄関との間には屋根のかかった半屋外の溜まりの空間を設け、雨にぬれす常に正面玄関から出入りできるようにしました。その壁面上部には京都の町家を想起させる魔除けの焼き物「鍾馗(しょうき)さま」を飾り、家を守る小さま守神のような存在にしています。
玄関を入ると小さな中庭が迎え、障子越しの柔らかな光が足元を照らします。抑えられた明るさの中で視線を低く導く設計は、わずかな空間にも奥行きを与えています。
内部では「天井の建築」が大きな特徴。天井の高さや仕上げを部屋ごとに変えることで、バリアフリーを考慮しながら機能と心理の両面から暮らしを整えています。
吹き放しのアプローチから竿縁天井、真鍮の目地棒を組み込んだ杉板の天井など、空間ごとに異なる表情に。
2階北側の高窓からは光が落ちダイニングを穏やかに包みます。
料理家でもある奥様のこだわりでキッチンは特に明るく設計。照度や色温度を細かく指定し、低めのカウンターとスツールを備え、軽食も楽しめる柔軟な構成です。
天井に込められた意匠と光の調律が、世代を超えて穏やかに共に暮らす日々を包み込んでいます。
Photo:中村写真工房 中村大輔