プロの住宅レシピ 本物の素材が響き合う──開放感と重厚感が調和する美容室兼住宅

福岡県北九州市の閑静な住宅街に建つ、ご夫婦と小さなお子さんが暮らす美容室兼住まい。ゆったりとした優雅な敷地環境を活かし、街との距離感とプライベート性を両立させた計画です。
1階は完全予約制の美容室。お施主さんが好んだコンクリート打放しをそのまま仕上げに採用し、重厚な空間に薪ストーブを添えることで冬の寒さを和らげています。
2・3階は住居空間。1階のRC壁を立ち上げてテラスを囲むことで、外からの視線を遮りながら大開口を可能にしました。吹抜や天窓から光が行き渡るLDKは、カーテンを閉めずに過ごせる開放感が魅力です。
L字型に設計された大小のテラスは朝食やBBQ、テントを張って過ごすなどのアウトドアを楽しめ、子どもの遊び場や物干しなど多用途に活躍し、稼働率の高い外部空間となっています。
内観には床にオーク材を使用し、フロアごとに異なる表情を持たせつつコストバランスも配慮。DIY好きなお施主さんに合わせて、素材感を活かした硬質な素材を選択して全体の調和を考慮することで、これからも変化していく余白を残しています。
リビングの引き戸には畳スペースも設け、子どもの昼寝や来客時の客間として柔軟に使える計画です。
階段はコンクリートから木造へと自然に繋ぎ、スリット窓から光を取り込むことで浮遊感と安全性を両立。
外観はRCと木造のコントラストをそのまま表現。木調シャッターや木製サッシが素材の硬さを和らげ、住宅街の中で静かに際立つ姿を見せています。
細部まで本物にこだわって選んだ素材が生み出す上質さは、日々の手触りや風景に確かな重みとして宿っています。
光や風が巡るLDK、家族の声が届く小窓、遊び場となるテラス。
どの空間も日常を抱きとめ、成長とともに姿を変えながら、家族の時間とともにますます表情を深めていくでしょう。
photo:YASHIRO PHOTO OFFICE・礒健介