プロの住宅レシピ 農とつながる暮らし──自然素材と調和する住まい

礒建築設計事務所
礒 健介

採れたての野菜をそのまま使うことなどを想定した厨房のようなステンレス製の造作キッチン。パントリー奥の勝手口からは畑から野菜を直接運び込める動線に計画。

土間コンクリートは農作業後の泥や水に強く、暮らしを外へと連続させる力強い基盤に。自然素材ならではの質感が日常に奥行きを与える。小上がりの段差が心地よいリズムを生み出す。

一から造作された木製サッシは上部をフィックスとし下部を引き戸で全面開放できる構成。立体的な奥行きを生むデザインが、庭と室内を一体に結び光や風を取り込む。

車通りに面する正面には格子を設け、視線をやわらげつつ光と風を招く。その右隣には奥様の商い空間がさりげなく街に開かれ、ファサードの象徴となっている。

室内のロフトから繋がる物見台はこの住まいの小さな仕掛け。畑の様子を見守りつつ外にも抜けられ、暮らしに遊び心を添える構成になっている。

福岡県古賀市の神社の参道沿いに建つ5人家族のために建てられた住宅。
お施主さんの希望は「畑仕事を楽しめる住まい」でした。

そこで細長い敷地形状に沿って内部と庭・畑が自然に繋がるように計画。
あえて距離感を持たせた奥行きは、廊下を縁側のように演出し、通り抜ける体験そのものが豊かさを生むよう考えられています。

内部は自然素材を中心に構成。漆喰壁が光を包み、杉板天井は構造を顕して経年の表情を深めます。 素材の選択は、お施主さんが好む無添加や自然志向のライフスタイルに呼応。

土間コンクリートは畑作業後の動線を受け止め、造作の木製サッシが全面開口して庭と繋がります。
自然素材の性能と設計意図が暮らしに直結する豊かなLDKです。

キッチン空間には畑から勝手口を経て直接つながる動線を設け、農作業と日常の料理が地続きになるよう構成。所々にある小上がりの段差は腰掛けられる居場所として機能し、暮らしにリズムを添えています。

正面の右側には奥様が小物を販売できる商い空間を併設。
隣の格子の設えが視線を和らげながら光を通し、街に対して静かに開かれる象徴的な要素となりました。

植栽計画もアプローチに向けて緑のトンネルをつくり、外壁に揺らぐ一本の木の影が日常の表情を豊かにしています。さらに室内のロフトから繋がる物見台を設け、裏の畑や山並みを眺められる小さな仕掛けとして暮らしに遊び心が加えられています。

畑で採れた野菜を食卓に運び、緑に包まれた玄関を抜け、自然と共に日常を編む。農と暮らしをひとつに結び、家族の時間とともに味わいを深めていく“現代の民家”と呼ぶにふさわしい住まいです。

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