プロの住宅レシピ ゆるやかに仕切り、ひとつに整える──自由なインテリアを受け止める住まいの器
千葉県千葉市美浜区に建つ高層マンションの一室を、若いご夫婦と娘さんの3人家族のためにフルリノベーションした住まい。新築・中古ともに流通が少ない人気エリアで「この地域に住みたい」という強い動機から物件探しが始まりました。
大きな特徴はインテリアデザインを建主ご夫婦自身が担ったことです。奥様は美術大学出身で、床・壁・天井の仕上げや色彩、建具、照明、金物に至るまで、自ら選びたいという明確なご要望がありました。一方で、部屋ごとに異なる個性を許容しつつ住戸全体としてのまとまりをいかに確保するかが設計上のテーマとなりました。
プランはダイニングキッチンを住戸の中心に据え、そこからオーディオルーム、書斎、洗濯スペースが連続する構成。水回りはマンション特有の制約を踏まえ、既存の給排水位置を大きく変えずに再構成しています。
また、玄関正面には書棚に囲まれた空間を設け、通路として消費されがちな動線上に、立ち止まり、使いこなすことのできる居場所を計画しました。ここから主寝室と子供部屋へとアクセスすることで、生活の切り替えを緩やかに受け止める構成としています。
意匠の表層を建主に委ねる代わりに、住戸全体を統合するための明確なルールを設定したことも大切な要素です。その一つがガラスの框戸による建具の統一であり、もう一つが床からH=2000mmを境界とした天井操作にあります。
梁を隠しつつH=2000mmより上部を共通の形状・素材でまとめることで、下部でどのようなデザインが施されても、空間全体の秩序が保たれるよう計画されています。
個人の感性と設計の秩序が重なり合うことで、住まいは一体の風景として成立しました。自由を受け止めながら全体を統合するための設計が、静かにその基盤を支えています。