プロの住宅レシピ つくり直さず、活かす── 既存建築を活かしたリノベーション
千葉県内に建つ築26年の重量鉄骨造2階建てビルを、京葉エナジーの新社屋として改装した計画。延べ床面積は約200㎡。産業廃棄物処理を主業とし、再資源化や環境配慮型の取り組みを続けてきた同社は、新築ではなく既存建築のリノベーションを選択しました。資源を使い切るという企業姿勢を、建築そのものに重ねるためです。
既存建物は、前面がピロティとして駐車場に使われていた古い事務所ビルでした。外壁を更新する予算はなく、基本は塗装のやり替えにとどめています。一方、内部は全面的にスケルトン解体し、骨組みだけの状態から再構成されました。残せるものは残し必要なところにだけ手を加える。その姿勢は、改装の随所に表れています。
1階はピロティだった前面部分を屋内化し、エントランスホールとして増床しています。床は断熱を施したコンクリート土間、天井は躯体現しとし、素材を過度に覆い隠さない構成です。
来訪者との打ち合わせの場であると同時に、社屋移転を機に立ち上げた廃材再利用事業のギャラリーとしても機能する空間です。
既存の応接室は会議室へと改修され、引き込み建具によってエントランスホールと一体利用できるよう計画されています。年に数度行われる大人数の会議にも対応し、用途に応じて空間の性格を変える柔軟さを備えています。
水回りやトイレもまた、この計画の姿勢が端的に表れる場所です。既存の給排水位置を活かし、大きな更新は行わず、必要十分な改修にとどめています。仕上げにはビニールクロスを用い、特別な演出は加えていませんが、全体のトーンにはわずかにグレーを含んだ白を選ぶことで、過度な清潔感や新しさを主張しすぎない落ち着いた印象を整えています。
住宅において水回りが「暮らしの基本」を支える要素であるように、社屋においても日常的に使われる場所ほど、無理なく、長く使い続けられることが重要です。素材や仕様を抑えながらも、使い方の余地を残す。その考え方は、住まいの設えにも通じる意識として、この建築の足元を支えています。
完成形を固定しないこと。作り込みすぎないこと。使いながら変えていける余地を残すこと。そうした考え方を前提としてつくられた社屋です。