プロの住宅レシピ 框戸と船底天井がつくる統一感──個性を受け止める住まいの設計

Smart Running一級建築士事務所
小泉一斉

ダイニングキッチンを住まいの中心に据え、周りに各部屋が連続する構成。マンション特有の梁や設備条件を踏まえながら、天井形状を操作することで視線の抜けと空間の広がりを確保している。

ガラスの框戸によって空間を完全に分断することなく用途を切り替える計画。開閉によって距離感を調整でき、家族の気配や光を共有しながらそれぞれの居場所が成立する。

梁を隠しながら上部を共通の形状とすることで、下部でどのようなインテリアが展開されても、空間全体のまとまりが損なわれないよう計画されている。

リビングとダイニングを横断する天井は船底天井とし、マンション特有の梁を包み込むように構成。高さと断面形状の変化によって空間を分けすぎることなく、緩やかな領域の違いを生み出している。

建主が自由に選んだ家具や色彩を受け止めるため、設計は背景として振る舞う。天井高さや建具、プロポーションといった意匠的なルールを揃えることで、異なる要素が共存する住まいの基盤を整えている。

千葉市美浜区に建つ高層マンションの一室。専有面積は約100㎡。マンションという建築形式は、構造や設備、梁の位置など多くの条件がすでに決められています。

一方で本計画ではインテリアデザインを建主が担うという明確な前提がありました。設計の役割は「自由が成立するための枠組み」を用意することでした。

建主のご要望は、部屋ごとに異なる個性をもたせたいというものです。色や素材、家具や照明に至るまで、自分たちの感覚で選びたい。しかしそれらが並列的に存在すると、住戸全体は断片的な空間の集合になりかねません。

そこで意匠の表層には介入せず、空間の秩序そのものを整えることで全体を統合する計画になりました。

ひとつの軸となったのが、ガラスの框戸による分節です。完全に遮断する壁ではなく、視線や気配を通す建具を住戸全体で統一することで、用途の異なる空間同士が緩やかに連続する関係をつくり出しました。開閉によって距離感を調整できるため、生活のシーンに応じて空間の性格が変化します。

もうひとつの重要な操作が天井の扱いです。マンション特有の梁を処理するため、床からH=2000mmを一つの境界とし、その上部を共通のルールでまとめました。梁を包み込むように持ち上げた船底天井とし、断面形状と仕上げを住戸全体で揃えています。

この操作によって床や壁でどのようなインテリアが展開されても、空間の骨格が揺らぐことはありません。

自由に選ばれた要素を受け止め、衝突させず、ひとつの住まいとして成立させるための下地を整えること。その結果として、個人の感性と設計のルールが重なり合い、住まいは一体の風景として立ち上がりました。この住まいの設計は前に出ることなく、その基盤をしっかりと支えています。

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